コラム

当社SAPコンサルタントに聞く!
DX時代に求められる
基幹システムの要件とは?(前編)

質問1
DXにおけるERPの価値とは何でしょうか?また、DX時代にふさわしいERPの選定ポイントについて、教えてください。

回答1
DXにおけるERPの価値とは、ありきたりな表現となりますが、次の2つを挙げたいと思います。ひとつめは、「業務の生産性向上」であり、ふたつめとしては「ビジネス上の意思決定支援」です。

そもそもDXとは、「デジタル技術を使ってビジネスモデルの変革を実現する」ことになりますが、ERPのほとんどの機能がバックオフィス業務に集約されていることから、ERPそのものでビジネスモデルを変革することに期待するのではなく、バックオフィス業務の視点からビジネスモデルの変革をいかに支援できるかに期待すべきでしょう。

そのためERPの選定にあたっては、ひとつめのERPの価値として挙げた「業務の生産性向上」には、「業務プロセスの標準化」を、また、ふたつめとして挙げた「ビジネス上の意思決定支援」には、「経営指標のリアルタイムな把握」が、両方とも確実かつ正確に実現できる機能がERPの標準機能として備わっていることが重要なポイントになると考えます。

よって、業務プロセスを標準化するには、選定されるERPにどれだけのビジネスシナリオが標準装備されているか、また経営指標をリアルタイムに把握するためには、ERPデータをどう活用できるかがカギとなります。SAP S/4HANAでは、ベストプラクティスと呼ばれる豊富なビジネスシナリオと、Embedded Analyticsいわゆる組込分析と呼ばれるERPデータをリアルタイムで分析するための機能が、標準機能として装備されています。

質問2
これまでの導入経験から、ERP導入の成功ポイント・秘訣は何でしょうか?

回答2
ERP導入の成功ポイントは、「極力アドオン開発しない」ことに尽きます。最近はERPの標準機能に業務を合わせるFit to standardの考え方が浸透しつつありますが、実際の導入現場ではまだまだ現行業務をベースとしたFit & Gapが要件定義フェーズで実施されています。ERPの導入プロジェクトでGap機能のアドオン開発を進めていると、必ずと言っていいほどユーザーから思いがけない仕様要求が次々と流れてきて、その対応のための追加工数を捻出しなければなりません。また、そういった追加の仕様要求が開発済みのアドオン機能との不整合を生じさせ、さらに追加工数が必要となり、ついには稼働時期の遅れやプロジェクトの中断を招いてしまいます。

誤解を恐れず申し上げると、ERPの導入は、そのパッケージのもつ機能をいかに使いこなすかが重要であって、自社の要件をいかに忠実にシステムに反映させるかは重要ではないと思います。自社の要件をあまりにも忠実にアドオン開発すると、いわゆる技術的負債が発生してしまい、バージョンアップができない、アドオン改修もコストがかかるためできない、といったことが起こってしまいます。その結果、導入当初のスペックのまま10年、20年とシステムを使い続ける羽目になってしまい、昨今のDX推進に支障をきたしているのではないでしょうか。

質問3
業務プロセスの標準化と経営指標のリアルタイムな把握は、ERPの導入目的として以前から取り上げられていたポイントでもありますが、あらためてDXを推進する企業にとって必要な視点があるとすれば、それは何でしょうか?

回答3
DXの推進により、あらゆる企業活動が今後益々デジタル化されていく中で、経営者がタイムリーな意思決定を行う際も、益々データの重要性が高まってきています。リアルタイムなデータを駆使してビジネスの最適化を図ることを「データドリブン経営」と呼んでいますが、このデータドリブン経営を実現するには、ERPデータを今まで以上にフル活用する必要があります。

具体的には、主な企業活動となる業務、すなわち購買、生産、在庫、販売、会計、人事の各データが組織間の壁を越えて共有されていることは言うまでもなく、それらのデータを業務や部門を跨いで活用できる分析ツールを、いつでも・どこでも利用できるようにしなければなりません。そのため、ERPは業務に必要なデータを共有するだけでなく、データと一体となった分析ツールをセットで提供できるソリューションでなくてはなりません。

DXは全社を巻き込んだビジネス変革です。それを成功させるためには、データドリブン経営による全社最適を、分析ツールを使って迅速に意思決定することで実現していく視点が必要です。

質問4
データドリブン経営を実現するには、ERPデータと一体となった分析ツールが必要であることはわかりました。では、様々な分析ツールが各ベンダーから提供されていますが、SAPではどのようなソリューションが提供されているでしょうか?

回答4
SAPからは、S/4HANAと連携した分析ツールである、SAP Analytics Cloud(SAC)が提供されています。また、アプリケーション開発を支える基盤として、SAP Business Technology Platform(BTP)が提供されています。

DX時代にふさわしいERPの導入は経産省のDXレポートでも指摘されている通り、技術的負債を減らすために保守運用の効率化を目指して、なるべくコア機能はアドオンしないことを前提とした導入であるべきです。そのためSAPでは、 コア機能はS/4HANAの標準機能をそのまま利用することとし、アドオンによる機能拡張や周辺システムとのインターフェイスには、BTPを使って疎結合による連携を行います。

よって、ユーザー・スペシフィックな要件が求められるソリューションは、ERPの中に求めるのではなく、疎結合により連携する分析ツールやアプリケーション開発基盤を活用するのが、技術的負債を発生させない方法となります。

後編へ続く